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確定申告の扶養控除や、医療費控除、青色事業専従者給与など、また、相続税の申告では、小規模宅地の特例など、税制の要件で「生計を一にする」という要件があります。
今回は、この「生計を一にする」とは、どのような状況にあたるのかを見ていきたいと思います。
ここで、参考になるのが、「生計を一にする」の意義について規定した所得税基本通達2-47です。通達とは、行政機関内部の文書であり、法令の解釈等を示すものです。
法に規定する「生計を一にする」とは、必ずしも同一の家屋に起居していることをいうものではないから、次のような場合には、それぞれ次による。 (1)勤務、修学、療養等の都合上他の親族と日常の起居を共にしていない親族がいる場合 であっても、次に掲げる場合に該当するときは、これらの親族は生計を一にするもの とする。 イ 当該他の親族と日常の起居を共にしていない親族が、勤務、修学等の余暇には 当該他の親族のもとで起居を共にすることを常例としている場合 ロ これらの親族間において、常に生活費、学資金、療養費等の送金が行われている場合 (2)親族が同一の家屋に起居している場合には、明らかに互いに独立した生活を営んでいる と認められる場合を除き、これらの親族は生計を一にするものとする。 |
「生計を一にする」の判断に当たって、実際に争われた事例をご紹介します。
■平成27年11月4日裁決
小規模宅地等の特例の適用をめぐり、被相続人と相続人が生計を一にしていたかどうかが争点でした。
国税不服審判所は、「生計を一にしていた」ことについて、「同一の生活単位に属し、相助けて共同の生活を営み、あるいは日常生活の資を共通にしていたことをいうものと解される」とし、「被相続人と同居していなかった親族が生計を一にしていたと認められるには、少なくとも、居住費、食費、光熱費その他日常生活に係る費用の主要な部分を共通にしていた関係にあったことを要するものと解するのが相当」としました。
○請求人の主張
この事例では、請求人は以下の理由で、生計を一にしていたと主張していました。
・被相続人の近隣に居住し、勤務の余暇には起居を共にしており、また朝夕の食事を共にする ことも多い ・会社を退職するまでの間、給料の大半を被相続人に渡してきており、昔から1つの財布から 各種支払が行われていた |
○国税不服審判所の判断
これに対し、国税不服審判所は、
・電気料金の支払が被相続人と相続人で別々だったこと、また被相続人の介護施設等の費用に ついては、被相続人が負担していたこと |
により生計を一にしていた親族とは認められないと判断しました。また、
・当該別居が、勤務、修学、療養等の都合に基づくものであると認めるに足りる証拠はない |
という理由からも否認しています。
税制上の「生計を一にする」とは、必ずしも同居を要件とはしませんが、別居の場合は、生活面だけではなく、金銭面も含めての判断になります。この判断を誤ると、税制上の特例などの適用が受けられず、税額を多く負担することになる場合もありますので、ご注意ください。
(この原稿は、2016年5月の法令に基づき、記載しております。)