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平成27年や28年は、大がかりな税制改正が目立ちました。弊事務所でも、この1年で改正内容にちなんだお問い合わせをいただくことが増えています。
平成28年の税制改正のひとつに、「農地保有に係る固定資産税の課税の強化・軽減措置」があります。この措置は、使われなくなった農地の活用を促進するために設けられました。遊休農地に対する課税額を上げたことと、貸し出しをすることで課税額を減らせる機会を設けたことがその主旨となります。
ただし、この措置は、府中市や調布市、狛江市においては適用されません。この3市はいずれも「三大都市圏」に属しています。この場合は農地の評価方法・課税方法がもともと異なるため、新しく設けられた措置は適用されないのです。
政府は、使用されない農地を減らすために以下のような措置を考案しました。
1.農地保有に係る固定資産税の課税の強化
遊休農地の所有者が、耕作する意思を見せないときやその農地の貸し出しを行わないときは、固定資産税の計算方法が次のように変わります。
時期 |
平成28年度まで |
平成29年度以後 |
計算方法 |
正常売買価格×限界収益修正率(0.55) |
正常売買価格 |
この結果、遊休農地と判断されてしまうと固定資産税額は約1.8倍も高くなります。
2.農地保有に係る固定資産税及び都市計画税の課税の軽減
所有する農地すべてを農地中間管理機構に貸し付けた場合は、以下の条件にもとづいて固定資産税・都市計画税が二分の一に軽減されます
貸付期間 |
課税額が軽減される期間 |
10年以上 |
最初の3年間 |
15年以上 |
最初の5年間 |
ただし10アール未満の自作地は対象外となります。また、この措置を利用できる期間は2年間となっています。
しかし先述している通り、これらの措置は府中市や調布市、そして狛江市のような三大都市圏(首都圏・中京圏・近畿圏)に所在する自治体には適用されません。
府中市・調布市・狛江市での近年の農地の状況は下記のようになっています。
市名 |
総面積 |
総耕地面積 |
農業経営体数 |
府中市 |
2.934ha |
173ha |
195 |
調布市 |
2,153ha |
155ha |
203 |
狛江市 |
639ha |
40ha |
64 |
(注)農林水産省発表の平成26年度の統計情報を引用しています(http://www.machimura.maff.go.jp/machi/index.html)。
今回の「農地保有に係る固定資産税の課税の強化・軽減措置」の導入に対して、政府には国内の農業を促進する目的もあったと考えられています。TPPに関する日米間の合意を背景に、3市内各地の農業の振興を歓迎する意見は確実に増えていくことでしょう。
一般の農地と三大都市圏(特定市街化区域)の農地では、課税上の扱いが大きく異なります。
1.価格の評価方法および課税方法の違い
農地の区分 |
評価方法 |
課税方法 |
一般農地 |
農地評価 |
農地課税 |
三大都市圏の農地 |
宅地並み評価 |
宅地並み課税 |
「農地評価」とは、農地として利用する場合の売買価額を基準にして、評価する方法です。
「宅地並み評価」とは、そのエリアの宅地の売買実例価格を基準にして、評価する方法です。造成費相当額は控除されるものの、将来的に宅地に変わる可能性を考慮しているため、一般の宅地と取り扱いが変わりません。
したがって、三大都市圏の農地の評価額は非常に高額になる傾向があります。非常に高額になる傾向があります。
2.税額の計算方法の違い
農地の区分 |
税額の計算方法 |
一般農地 |
下記のいずれか、少額となるほうを採用 A:評価額×税率 B:前年度の課税標準額×負担調整率×税率 |
三大都市圏の農地 |
下記のいずれか、少額となるほうを採用 A:その年度の宅地並み評価額×1/3×軽減率(注)×税率 B:(前年度の課税標準額+その年度の宅地並み評価額×1/3×5%)×税率 |
(注)軽減率は、新しく特定市街化区域農地になった場合にしか適用されません。
この軽減率を受けられる期間は4年間で、その数値は以下の通りです。
年度 |
1年目 |
2年目 |
3年目 |
4年目 |
軽減率 |
0.2 |
0.4 |
0.6 |
0.8 |
このように、農業に関連する税金は独特のものが多くあります。農地に関するご相談は、地元密着の農業の税務に強い税理士に相談しましょう。
(※この原稿は、2016年04月の法令に基づき、記載しております。)